
恐怖のモンスター 怪物の子守唄【日野日出志ショッキング劇場】
ひばり書房時代の代表作の一つです。表題作「恐怖のモンスター」は全3話の連作形式で、全部で100ページほどの中編です。何にも悪い事をしてないのに“姿が醜い”というだけで迫害されるモンスターの悲しみを、ユーモアやパロディーで包んで表現した傑作シリーズ。このモンスターは見た目に似合わず愛嬌があり、読んでるうちにすごく愛着がわいてきます。作者自身も彼のことが大好きなんだろうなってのが、伝わってくるような作品です。
「山鬼ごんごろ」は残酷日本昔話といった趣の名作中の名作。「ゆん手」は、左腕が自分の意思を離れて勝手に動き出すようになり、次第にその行動がエスカレートしていき…というホラー作品で、これも十分に楽しめます。「鶴が翔んだ日」は一面の銀世界広がる雪国を舞台とした、静かな感動のある叙情幻想作品です。
メインタイトルが「怪物の子守唄」となって大きく表示され、表紙のイラストも変わりましたが、従来の「恐怖のモンスター」と同じ内容です。また表題作「恐怖のモンスター」は、後にアンソロジー本に収録された際に「愛しのモンスター」と改題されています。こちらに関しては“恐怖の”よりも内容に合っていて良い改題ですね。
「恐怖のモンスター(全3話)」
「ゆん手」
「鶴が翔んだ日」
「山鬼ごんごろ」

悪魔が町にやって来る 恐怖!!ブタの町【日野日出志ショッキング劇場】
ひばり書房から出版された描き下ろし長編作品です。一言でいえば、不条理ホラーという事になると思う。ある晩突然、マスクを被り馬に乗った謎の集団が、武器を手に町を襲撃してくる。主人公の少年だけは命からがら何とか逃げのびるが、他の住人は殺されあるいは捕われの身となってしまう。捕えられた人たちは不思議な力で豚に変身させられ、家畜として扱われるのだという。彼らの正体はいったい…!?
いきなり現代の町が支配されてしまう理不尽さだとか、人が豚にされてしまう不条理な恐怖だとかは良く出ていると思う。それに絵が非常に良いです。独特の生々しい絵柄で、悪夢的世界を描き切っています。豚になることを拒否した人々は目玉をくりぬかれ、釜でゆでられ、ギロチンで首を飛ばされる…。まさに地獄絵図です。
正直ストーリー自体は特筆すべきものはなく、先生のひばり時代の傑作群の中では目立つ作品ではありません。謎の残るオチにも絶対賛否あると思います。これをどう解釈していいものか…。しかしそれでも、これは見逃すべきではない作品だと自分は思っています。

赤塚不二夫のまんがNo.1シングルズ・スペシャル・エディション
テープの音源がなかったのか、ソノシートからのリマスタリングのようで、プチプチノイズが少し入っています。
でも、これが聴けるなので、すごすぎ!
井上陽水の「桜三月散歩道」が聴きたかったのだけど、他の曲も、すごくいいです。

地獄変 (マジカルホラー (5))
ある地獄絵師の語りで進んでいく物語。
自分の祖父、父、母、弟、妻、娘と息子について…。
地獄絵師の夢か現実か分からない状態で話は進んでいく。
この漫画は読後に作者、日野日出志の人生や家族構成を調べてみて欲しい。
(まずあとがきの日野日出志インタビューを読む事)
するとどうだろう。ラストで決着がついた話がまた夢か現実か分からなくなってくる。
どこからどこまでが本当で作り話なんだ?そんな奇妙で心地よい混乱を与えてくれる漫画である。
(ぜひ「地獄の子守唄」も読んで欲しい)

毒虫小僧 (ヒットコミックス ショッキング劇場)
日野先生のひばり書房時代の単行本には傑作が数多くあります。そして本作は、その中でも上位の代表作と目される長編作品です。虫や動物が大好きな内気でいじめられっ子の少年が、ある日見たこともない奇妙な毒虫の針に刺されてしまいます。それ以来彼は奇病に侵され、高熱に倒れる。ほどなくして肉体には異変が現れはじめ、ついには不気味な怪虫へと変身してしまう。人間ではなくなった少年は、家族にすら見捨てられる…
絵による視覚的・生理的恐怖には強烈なものがあるのですが、「地獄小僧」「地獄少女」などでも日野先生が一貫して描いてこられた、“虐げられし者の孤独”というテーマが非常に強く現れた作品でもあります。周りの人間たちの悪意が優しかった少年を殺人鬼へと変えてしまったのか。ラストシーンは何とも例えようのない余韻が残る。
「毒虫小僧」の単行本は、今までに「ジャンプスーパーコミックス版」「ひばり書房版」「オンデマンド版」など数種類が出ており、「ジャンプスーパーコミックス版」のみ「はつかねずみ」という初期の名作短編を同時収録しています。飼っている可愛いねずみが徐々に凶暴化し、逆に家族を恐怖で支配しはじめるという不条理を描いた怪奇作品です。