学校に行かなかった研一―「年上の妹」がつづるケンチャンの素顔
大前さんがいいのはただの評論家ではなく、遊びも楽しめてきなところがあり、エピソードが面白い点である。論は確かに鋭いが、最近は同じようなことが多い気がします。やはりエっと思えるエピソードは、気楽に楽しめるものです。
ただ成功のためでなく (ソフトバンク文庫)
内容としては、外食産業の会社であったワタミが、農業、教育、医療・介護の領域に事業を拡大、外食産業もやっている会社へと変貌しつつある姿を、渡邉美樹社長が自ら記したものです。
「誰かがやらなければいけないことを、他人任せにせず、自分たちでやる。」
それら個別の事業への参画する意義については、興味深く読むことができました。
ここでは、個別事象でなく、各項目に共通の事象について、印象に残ったことを書きたいと思います。
それは、農業であれば耕作放棄地の有効活用、教育や医療であれば破たん寸前の学校法人・医療法人の買収により、以前の方針から運営をがらりと変えていくプロセス、およびその結果についてです。
すなわち、いずれの場合でも、
・以前にはなかった、「経営」という観点を現場に持ち込んだ。
・それにより、従来の体質でしか生きていけない人々が去って行った。
・新しい体制に共感し残った人員により、全く異なった「組織」が生まれた。
というものです。
これまでのやり方を変えるというのは、大変な労力が必要です。
もちろん、既得権益を守りたい人は、新たな体制に協力的な態度を取らないでしょう。
場合によっては、組織がぎくしゃくし、大量の退職者が生まれることもあります。
それでも、理念を共有できる人が残れば、組織は変えられます。
それまで、サービスを提供する側の理屈でしか考えられなかったところが、サービスを受ける側の視点に立って、物事を考えられるようになります。
夢を現実のものとしていく楽しさを実感することができます。
そういったことの素晴らしさを改めて教えてもらうことのできる、素晴らしい本だと思います。
大前研一 敗戦記
数ある大前研一著作の中では最高。怨念とも反省とも諦めともとれるのだが、とにかく本書のボルテージはすごい。この本を書いてしまったことによって、彼の中では「政治」というものを達観してしまったかのような感じさえ受ける。そのせいかもしれないけど、本書以降の彼の著作は、昔言ったことのパラフレーズがあまりにも多くて関心しない。彼は都知事選で全エネルギーを使い果たしてしまったのだろう。ここには戦う大前研一の最後の姿が克明に、何の衒いもギミックもなく赤裸々に描かれており、その率直さゆえに胸を打つ。これを他山の石として、我々はさらに先に進まなければならない。そのためにも必読の書。