やきもの文化史―景徳鎮から海のシルクロードへ (岩波新書)
著者は中国陶磁の研究者。「海のシルクロード」ということを言い出した人物で、中国から輸出された陶磁器が、世界各地に分散していったさまを明らかにしてきた。
本書は中国陶磁を世界的視野から位置づけ、また青磁や白磁など種別に考証を記したもの。商品としてどのように発展し、誰にどうやって販売されたかに重点が置かれ、実際に自身が世界各地で行ってきた発掘や調査の例が挙げられている。失敗作でも売ってしまったこと、顧客のニーズに合わせた商品開発が行われていたこと、地域による中国陶磁の受容の違いなど、なかなか刺激的な話が多かった。
美術品・骨董としての話はほとんど出てこないので、そういう本を求めている人には向かない。
また、文章を書くのが苦手な人らしい。
景徳鎮からの贈り物―中国工匠伝
1980年に出た単行本の文庫化。
中国史上の工芸の名人を主題とした短編8本が収められている。
取り上げられているのは、刺繍、夜光杯、彫壇、磁器、墨、七宝、筆、それからちょっと変わったところで絵画の複製づくり。
いずれも、その技や芸そのものに魅力がある。とてつもない巧みさで名品をつくっていく。しかも、著者の語り口が上手い。歴史背景やロマンスとからませつつ、「おっ」と驚くような結末へと持っていく。本当に匠の技だ。