でいごの花の下に (集英社文庫)
嘉手川の遺書が冒頭に出てきてから、最後彼の居場所を探り当てるまでの物語が急展開したり、意外な人物が登場したり(彼の元恋人)と、驚かせられたことが多かった。耀子の嫉妬深さと執念、少年の誘惑、「ここまでやるか」と思ったのが正直なところだが、こういう状況になった時に思いもよらない行動をするのが女性なのかも?と想像できなくもない。
何よりもこの物語で一番胸を打ったのは、沖縄戦の歴史と過去をひきずるひとたち、ウチナーとヤマトの壁、それがアメラジアンである嘉手川の暗い歴史と重なり、現在も残る沖縄(日本)の問題として、耀子が挑み、いつしか自分自身が耀子とシンクロしてその重みを感じていった。ずっしりくるが、内容はとても濃かった。
ラストの嘉手川が遺した写真が、意外であったが、救いを感じ、感動した。
となりの用心棒 (角川文庫)
沖縄出身の勇作は父親の顔も母親の顔も知らず、祖父のもとで育てられた。その祖父から教えられた空手を武器にアメリカへ渡り、帰国後に夏子の家に婿養子に入る。そして夏子の勧めから一念発起して空手道場を開くのだが、思うように門下生は集まらず。その代わりに頭を抱えるような相談事ばかり……。
物語は、ちょっと切ない現代のヒーローを描いた作品。物語の舞台が商店街ということもあって、登場人物は非常に多く、そのため設定が込み入りすぎていましたが、それぞれに個性ある登場人物で、展開も中々面白かったです。ただ主人公のキャラクターが弱く感じ、もう少し個性的に描けば、更に展開の幅も広がったとは思えました。