東京メトロをゆく (イカロス・ムック)
本書は東京メトロについて歴史や運用など様々な面から解説するものです。歴史を解説する上で日本で最初の地下鉄を含む東京メトロについて建設の歴史の部分は欠かせません。レビュー者は最初の地下鉄が銀座線で開削工事(溝を掘って蓋をする方法)で建設された位は知っていましたが、「ウルトラC級メトロ建設史」で解説される内容(工事上の事故を含む)はとても興味深いものでした。都市土木やトンネル工事に携わる土木技術者にも是非、読んでほしい内容です。また、「東京メトロを「動かす」」の章も地下鉄を支える裏方の仕事を垣間見る思いで興味深い内容です。
なお、本書で解説される地下工事から東京の地下について興味を興味をもたれたら、秋庭俊著『帝都東京・地下の謎86』(2005年、洋泉社)を手にされることをお勧めします。
プラレール 東京メトロ 南北線&千代田線ダブルセット
昭和40年後半に「21世紀の電車」として登場した営団地下鉄(現・東京メトロ)千代田線6000系もそろそろ引退の話がささやかれるようになりました。実車が現役の内に記念にと思いこの製品を購入しました。
この製品は以前営団時代に販売された製品の、営団ロゴマークのモールドを止めてメトロのロゴのシールを貼り付け、ヘッドライト点灯化・テールランプの導光化など手を加えた物です。
しかし、ファンとしては今回発売に当たって以下の3点も是非とも修正して欲しかったと思います。
1.屋根上のクーラー。(現在全車冷房化されている)
2.側面のラインカラーの帯の表現。(製品は初期のFRP板貼り付けの表現がなされているが、現在の実車はフィルム貼り付け)
3.客室側面の寸法。
これでは6000系というよりも、まるで同線を走っているJR203系のように見えます。
6000系の前期型の窓はもっと天地方向の寸法が短く低い位置にあるはずです。
以上が「教育的価値」の星ふたつ減点理由です。
その他にも細かく見れば、
・運転室前面窓の小さい方が異様にくぼんでいる。
・9000系では表現しているアンチクライマーがない
などもありますが、その当たりは許容範囲内でしょう。
南北線9000系の方は、9000系というよりはむしろ、やはり千代田線に1編成だけある「06系」のように見えます。
いろいろ長々と書き綴りましたが、玩具として見た場合には丈夫で壊れにくく出来ており、お子さんが遊ばれるには文句なくよい製品だと思います。
JSA [DVD]
朝鮮戦争は平和条約が締結されず、休戦状態(つまり戦闘状態)にあるため、絶えず両国は緊張関係にある。休戦により両国の緩衝地帯である北緯38度を境にした休戦ラインで対峙する南北朝鮮の兵士たち。38度線と言っても休戦が成立したときの前線であるため、そのラインは直線では無く、入り組んでいる。訓練中に北側にまよいこんだ韓国兵士役のイ・ビョンホンがソン・ガンホに助けられたことから、南北兵士の間に友情が芽生える。
ソン・ガンホの演技が圧巻。祖国に殉じる信念に生きる古参の北朝鮮兵士を演じている。北朝鮮の飢餓の様子がニュースとして伝えられることがあるが、イ・ビョンホンに亡命を勧められた時、ソン・ガンホが「おれの夢はこんなにうまい菓子を祖国がつくるようになることだ」とほおばっていたロッテのチョコパイをいったんはき出して言うシーンが迫力だった。
軍備優先の北朝鮮社会では民生、特に嗜好品である菓子の生産は優先度が低く、民衆が口にすることなどあり得ないのだろう。いつか祖国が豊かになってみんながうまい菓子を食べられる時代が来るまで、自分は戦うのだという信念が伝わってきて涙を誘う。
中立国監督委員会のスイス陸軍将校としてイ・ヨンエが紅一点で花を添えるが、彼女の父も実は朝鮮戦争が生み出した悲劇に翻弄されていたことがラストで判明する。
南北朝鮮の遠因は日本の占領統治と言われるが、今の平和な日本からは想像できない若者たちの現実を体験できる名作。
ベトナム北緯17度線の断層―南北分断と南ベトナムにおける革命運動(1954~60)
ベトナム戦争についての書物や、映画は数多くある。しかし、ベトナムがなぜ南北に分断されたのか、南ベトナムにおける紛争はどのように激化したのか、北ベトナムはどのように関与したのか、アメリカはどのように介入したのかについては、それほど明らかになっていない。この本は、これまであまり注目されてこなかったが、ベトナム戦争の歴史を振り返るに極めて重要な1954〜60の時期について分析している。ベトナム側の資料を用いることにより、これまで言われていた通説をことごとく覆し、新たな事実を明らかにしている。ベトナム反戦運動を経験した世代も、映画でしかベトナム戦争を知らない世代も、必読の書である。