
Back to Black
訃報に接した時は、驚きと共に、正直、「やっぱりか」という感覚にも捉われました。
新作の発表を心待ちにしていただけに、まさに痛恨の思いです。
僕等彼女の音楽を愛する者達に出来るのは、もはや、残された音源を繰り返し聴くことだけになってしまいましたが、リアルタイムでその生き様を目の当たりに出来たことは、ある意味幸運なことだったと言えるのかもしれません。
ジャニス、ジミ、カートらと共に、今やレジェントとなったエイミー。
今後、その存在は、音楽シーンにおいて永遠に語り継がれていくことになるのでしょう。・・・
本作は、そんなエイミーが2006年に発表した2nd作であり、‘00年代を代表する名盤であります(因みに、僕個人にとっての2007年ベスト1アルバムでもあります)。
HIP HOPを中心とするクラブ・ミュージックが隆盛を誇っていたあの頃、50〜60年代のオールド・スクールなソウル/ジャズを、そのプロダクションごとこの新世紀に持ち込んできたかのような作風であり、シングル『REHAB』を初めて聴いたときの衝撃は、今も忘れることが出来ません。
この、R&Bシーンにおけるローファイ/ローテクムーヴメントとでも呼ぶべき方向性は、まさに彼女を源流として現在にまで至っていると言えるでしょう。
リリー・アレンやダフィー、あるいは本年のハイライトとでも呼ぶべき大ブレイクを果たしているアデルも、完全にこの流れの中にいるアーチスト達だと思います。現在大ヒット中の、CEE LO GREENの『FORGET YOU』なんかもそうでしょう。
これらは全て、エイミーのこのアルバムが作り出した流れなのです。
確かに、プロダクションの力(マーク・ロンソン)も相当に大きかったとは思いますが、彼女のカリスマ性、そしてそのスキャンダラスな大衆性やスター性が無かったら、ここまでのムーヴメントにはなり得ていなかったと思います。
要するに、存在感が半端じゃない人だった、ということなのです。
彼女の死をきっかけとして、初めて本作を聴くという人も多いと思います。
今流行りのエレポップ、ダンスポップじゃないので、ひょっとすると即効性は薄いかも知れませんが、真にソウルフルなヴォーカル作品を聴きたい人なら、絶対に満足してもらえると信じています。
そして本作は、いつまでも廃れることの無い、ポップシーンにおける新たなるスタンダード作品となりました。
残念ながら、彼女の死とひきかえに・・・。
REST IN PEACE、AMY・・・

バック・トゥ・ブラック
グラミー賞で歌ってた1. リハブ もいいけど、5.バックトゥブラックが最高だね!
録音は、たぶん60年代の雰囲気を出すため敢えてアナログっぽい音にしたんだろうけど…
まぁ、これもエイミーのこだわりなのかなぁって感じですね。でも、もし最新の機材で録音してたとしたら…
亡くなる前、リハブに行って立ち直りかけてたみたいですね。
「周りに勧められても私はリハブなんか行かない」って歌ってたのに、なんとも皮肉な結末ですね…
残念です。

バック・トゥ・ブラック~デラックス・エディション
本作品は「バック・トゥ・ブラック」の通常版にボーナスディスクが付いている。ボーナスCDの8曲は「ヴァレリー」など別売のライブDVDにも入っている曲なのだが、さらにビデオCD規格で「リハブ」「バック・トゥ・ブラック」「ユー・ノー・アイム・ノーグッド」「ティアーズ・ドライ・オン・ゼア・オウン」「ラブ・イズ・ア・ルージングゲーム」の代表曲5曲のPVが入っている。
彼女は現在盛んにヨーロッパツアーを行っていてプラチナチケットになっているらしいが、ドラッグの関係で米国からはシャットアウト。MTVなどでもPVはほとんどOAしないから、貴重なPV5曲となる。
それにしても今年2月のグラミー賞総なめ以来、音なしの構えの彼女だが、そのうち世界をあっと驚かすパフォーマンスをやらかしそうですねえ。
(2010年4月25日記)
新装発売のCD2枚組。DVDはなく、2枚目のCDには「ヴァレリー」「モンキー・マン」などの新バージョンか詰まっていて、これまたマニアック! ところでエイミーはアルロール依存症から完全に立ち直った様子で最近は作曲に専念している模様です。素晴らしいニュー・ジャズを期待します。
◆追悼◆エイミーは2011年7月23日に27歳の若さで他界、伝説の歌手となってしまいました。