
暗殺者の森 (100周年書き下ろし)
私は「カディスの赤い星」の頃から逢坂剛のファンです。
逢坂作品をすべて読んでいるわけではないのですが、8〜9割は読みました。逢坂剛は話作りが上手い作家で、外れが少ないと思います(西部劇は酷かったけど)。
そんな逢坂剛の作品でも、イベリアシリーズは最高傑作の一つに挙げられると思います。
本作はイベリアシリーズの第6巻。第二次世界大戦の大勢が決まった1945年5月までの話となります。
他のレビュアーの方も書かれていますが、私も本シリーズはヴァジニアと北都の恋愛ストーリーとして読んでいます。しかし本作第6巻は、ヴァジニアも北都もほったらかしの展開が多く、話自体も淡々と進むため盛り上がりに欠け、映画のシナリオを読んでいるような気分になりました。
しかしそれでも、私は逢坂剛のファンであり、本シリーズの贔屓なので、☆4つ付けるのであります。
ファンの贔屓目なんです。

ドビュッシー / ラヴェル [DVD]
入念なリハーサルを重ねてきて、楽団もチェリビダッケの要求が体に染み付いた状態になっているようですね。非常にクオリティが高いです。
また観客も、時折天井を見上げたり目をつぶったりしてこちらもまた指揮者の求める音を感じ取ろうという心構えが出来ているように見えます。
オーケストラを上から見下ろすようなアングルで映し出されている映像を見ると、指揮者はいつもこのような視点でオーケストラを見下ろしながら指揮をしているのだろうと思わずにいられません。演奏効果がよく計算された美しい演奏だと思います。

聖戦のイベリア
「聖戦」と聞くと、宗教的なイメージが強く神のために戦う敬虔な信徒の「聖なる」戦争を思い浮かべるかもしれない。
しかしこのCDではタイトルから連想する立場とは全く逆だ。
確かに信徒にとっては「聖戦」かもしれない。
しかしそれに巻き込まれた者たちにとっては・・・その「聖戦」は地獄でしかない。愚かな争いでしかない。
Sound Horizonらしい「語り」を交えながら、まるで戦争の悲劇を描いた一つの映画を作り上げているような音楽だ。
ファンタジックでありながらどこかリアルなその世界は、聞くものを引き込んで離さない。
特に、女性陣の澄み渡る高音が、悲劇を嘆くようでもあり、天の上から傍観するようでもあり、また争いに対する憤りを表しているようでもある。
歌詞もダークな面を描いたところもあるが、どことなく物語りチックでそれほど抵抗を感じないのではないだろうか。
3曲に繰り返し出現する旋律は聞いた後も耳を離れずに私を魅了してやまない。
私は戦争の悲惨さを知らずに育った世代だが、此の曲を聴くたびに、戦争をやめられない人間の愚かさと幼さを実感する。
戦争がテーマなため嫌う方もいるかも知れない。
だが、私は自信を持ってお勧めできる。
美しい音楽と響き渡る歌声、逞しい馬の嘶き、激しくぶつかる剣の金属音・・・それらSound Horizonが作り出す世界に酔いしれながら、目の前に現れるレコンキスタに翻弄された人々と一時の会話を交わしてはいかがだろうか。

イベリア 魂のフラメンコ [DVD]
1998年、カルロス・サウラ監督の "Tango" はカンヌ国際映画祭で高い評価を受けた。他にも舞踏関係で名作の多いスペイン映画界の巨匠だ。同監督は舞台でも "Salome" を演出し、フラメンコとバレーを融合して賞賛を浴びた。そして、その娯楽性を追及しない真摯な姿勢は、フラメンコでこそ力量が発揮される。アイーダ・ゴメスは "Salome" でも舞踏を超える「魂」や「心」というものを見せたが、本作でも同様だ。スペインの血ならではの監督と舞踏家の、本質に迫る画像と音楽でフランメンコに魅せられる。

イベリアの雷鳴 (講談社文庫)
物語の導入は東京、戦後間もない焼け野原の東京で小中学生の兄弟が外国人将校を偶然助けるエピソードから始まる。
そして舞台は第二次世界大戦開幕前のスペインに。
ファシストの援助を受け内戦に勝利したスペインのフランコ政権。
英国の軍事上の要所ジブラルタルが臨み、連合国側とも関係が深いこの国の軍事的立場をめぐり、各国のスパイおよび軍人、他が情報合戦を繰り広げる。
日系ペルー人、新聞記者、伯爵夫人、純情なスペイン娘、連合国要人、ドイツ人軍人とスパイたち、
時代に翻弄される彼らたち。
そしてスペインのとった行動と彼らの運命は・・・
われわれはスペインが第二次世界大戦の時、どのような立場だったか調べることができるが、その時代を生きてきた人にとってはまさに生きるか死ぬかの問題である。
この本に出てきたような人々が多くこの時代存在していたのであろう。
題材としてはおもしろい。
しかしエンターテイメントとしては、逢坂剛の他の作品に比べると連載小説であったことを入れても物足りなかった。
尻切れトンボで終わってしまった気もする。
読み応えは十分あった。本当によく調べている、しかし小説としての面白さがその分かけてしまった。
その点は否めない。